社会保険とは?健康保険・厚生年金・雇用保険の基本
給与明細を見て「社会保険料」がいくつも引かれていることに驚いたことはないでしょうか。社会保険とは、病気やけが、失業、老後…

給与明細を見て「社会保険料」がいくつも引かれていることに驚いたことはないでしょうか。社会保険とは、病気やけが、失業、老後の生活などに備えて、国が運営する公的な保険制度の総称です。会社員として働く場合は、健康保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険という複数の制度に、条件を満たせば加入することになります。この記事では、それぞれの制度の役割と加入条件の基本を、厚生労働省・日本年金機構・全国健康保険協会の資料にもとづいて解説します。
社会保険とは何を指す言葉か

「社会保険」という言葉は、狭い意味では健康保険・厚生年金保険を指しますが、広い意味では雇用保険・労災保険を含めた4つの制度全体を指して使われることも多くあります。このうち雇用保険と労災保険をまとめて「労働保険」と呼ぶこともあり、呼び方が場面によって変わるため混同しやすい分野です。この記事では、会社員が関わる機会の多い4つの制度(健康保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険)についてそれぞれ説明します。
健康保険:病気やけがの医療費を支える制度

健康保険は、病気やけがで医療機関を受診したときの医療費の一部を保険でカバーする制度です。会社員の多くは、全国健康保険協会が運営する「協会けんぽ」、または企業ごとに設立された健康保険組合のいずれかに加入します。
法人の事業所は、役員のみの会社を含めて原則すべてが健康保険・厚生年金保険の適用事業所となります。個人が営む事業所についても、常時5人以上を雇用している場合は原則として適用事業所となります。
厚生年金保険:老後や障害・死亡に備える年金制度
厚生年金保険は、老後の年金や、病気・けがで障害が残った場合の障害年金、亡くなった場合の遺族年金などを支える制度です。厚生年金保険の適用事業所に常用的に使用される70歳未満の人は、国籍や性別、年金の受給の有無にかかわらず被保険者となります。
週の所定労働時間や所定労働日数が短い人については、通常の労働者の4分の3以上であれば被保険者となるほか、一定規模以上の企業(特定適用事業所)で働く場合は、週の所定労働時間が20時間以上、賃金が月額8.8万円以上、学生でないことなど、複数の条件をすべて満たすことで加入対象となります。
雇用保険:失業や休業に備える制度
雇用保険は、失業した場合や、教育訓練を受ける場合などに、生活の安定と再就職の促進を目的として給付を行う制度です。労働者を1人でも雇用する事業所は、一部の農林水産業などの例外を除き、原則として雇用保険の適用事業所となります。雇用形態(正社員・契約社員・パート・アルバイトなど)にかかわらず、一定の勤務時間などの条件を満たせば加入対象になります。雇用形態ごとの違いについては、正社員・契約社員・派遣社員・パート・アルバイトの違いをゼロから解説で解説しています。
労災保険:仕事中や通勤中のけが・病気に備える制度
労災保険は、仕事中や通勤中のけが・病気・死亡に対して給付を行う制度です。労働者を1人でも雇用していれば、原則としてすべての事業所が適用対象となり、雇用形態にかかわらず労働者であれば保険の対象になります。労災保険の保険料は事業主のみが負担するため、従業員の給与から労災保険料が引かれることはありません。
4つの制度の比較
ここまで見てきた4つの制度を、保険事故・運営主体・保険料の負担者で整理すると次のとおりです。
| 制度 | 主な保険事故 | 運営主体 | 保険料の負担 |
|---|---|---|---|
| 健康保険 | 病気・けが(業務外) | 協会けんぽ・健康保険組合 | 事業主と本人の折半 |
| 厚生年金保険 | 老後・障害・死亡 | 日本年金機構 | 事業主と本人の折半 |
| 雇用保険 | 失業・教育訓練 | 国(ハローワーク) | 事業主と本人で決まった割合 |
| 労災保険 | 業務中・通勤中のけが・病気 | 国 | 事業主が全額負担 |
このように、労災保険だけが事業主の全額負担であり、他の3つは事業主と本人で分け合う仕組みになっています。
「年収の壁」と社会保険の関係
パート・アルバイトとして働く場合、「年収の壁」という言葉を耳にすることがあります。これは、一定の年収を超えると自分自身が社会保険に加入する必要が生じ、扶養から外れる収入の目安を指す言葉です。この基準は近年たびたび制度改正が行われており、2026年時点でも次のような見直しが進められています。
- いわゆる「106万円の壁」(月額賃金8.8万円以上などの要件)は、2026年10月に撤廃される予定で、週20時間以上働く労働者は企業規模にかかわらず社会保険への加入対象になる方向で制度が変わりつつあります。
- 「130万円の壁」(扶養認定の年収基準)についても、2026年4月から収入の算定方法が見直されるなど、細かなルール変更が続いています。
この分野は制度改正が特に頻繁なため、扶養の範囲内で働きたい場合や、社会保険への加入時期が気になる場合は、必ず勤務先の担当部署や年金事務所、協会けんぽなどで最新のルールを確認するようにしてください。
家族を扶養に入れる場合の考え方
配偶者や子どもなどを健康保険上の扶養に入れる場合、扶養される側は自分で健康保険料を支払わずに医療保険の給付を受けられます。一方、厚生年金の第3号被保険者になると、厚生年金保険料を直接支払わなくても将来の年金受給に反映されます。扶養に入れるには一定の収入基準や勤務時間の上限があり、具体的な基準は勤務先や健康保険組合によって異なるため、該当するかの判断は勤務先の担当部署や加入先の保険者に確認するのが確実です。
退職後の選択肢
転職で一旦会社を離れるとき、健康保険については主に3つの選択肢があります。
- 任意継続被保険者制度: 退職前の健康保険に最長2年間継続して加入できる制度。退職日までに2ヶ月以上の被保険者期間があり、退職翌日から20日以内に手続きする必要があります
- 国民健康保険への切り替え: 居住地の市区町村が運営する制度への切り替え
- 家族の健康保険の扶養に入る: 配偶者などの勤務先の健康保険に扶養として入る方法。収入など一定の要件を満たす必要があります
いずれを選ぶかは個人の状況によって異なるため、退職先の加入していた健康保険組合や市区町村の窓口で相談するのが確実です。
社会保険料はどのように決まるのか
健康保険・厚生年金保険・雇用保険の保険料は、多くの場合、会社(事業主)と本人がそれぞれ一定の割合で負担する仕組みになっています。保険料率は毎年度見直されるため、以下は令和8年度時点の目安として参考にしてください。
| 制度 | 令和8年度の保険料率の目安 | 本人負担の目安 |
|---|---|---|
| 厚生年金保険 | 18.3% | 9.15%(労使折半) |
| 健康保険(協会けんぽ全国平均) | 9.9% | 4.95%(労使折半) |
| 介護保険(40〜64歳) | 1.62% | 0.81%(労使折半) |
健康保険料率は加入する協会けんぽの都道府県支部や、企業ごとの健康保険組合によって異なります。また、保険料は給与だけでなく賞与にも一定の計算式で発生します。正確な金額や最新の料率は、毎年度、協会けんぽや日本年金機構の公式サイトで確認するようにしてください。
雇用保険料率についても業種によって異なり、こちらも毎年度見直されるため、正確な料率は厚生労働省の最新の公式情報で確認することをおすすめします。
雇用保険で受けられる給付の種類
雇用保険は失業時の「基本手当(失業給付)」だけの制度ではなく、状況に応じて複数の給付が用意されています。代表的なものは次のとおりです。
- 基本手当(いわゆる失業給付): 離職して求職活動をしている期間の生活を支えるための給付。離職理由や被保険者期間に応じて、受給できる日数や開始時期が異なります
- 教育訓練給付: 厚生労働大臣が指定する講座を受講し修了した場合に、費用の一部が支給される制度。在職中でも利用できる場合があります
- 育児休業給付・介護休業給付: 育児休業や介護休業を取得した際、賃金の一部を補う目的で支給される給付
基本手当を受け取るには、離職後にハローワークで求職の申し込みを行い、原則として4週間ごとに失業の認定を受ける必要があります。転職活動の期間が長引きそうな場合は、早めにハローワークへ相談しておくと安心です。
労災保険で受けられる給付の種類
労災保険は、仕事中や通勤中のけが・病気・障害・死亡に対して、治療費や休業中の収入減を補うための給付を行います。主な給付には次のようなものがあります。
- 療養(補償)給付: 労災指定医療機関で治療を受けた場合、原則として自己負担なく治療を受けられる給付
- 休業(補償)給付: けがや病気で働けず賃金を受けられない場合に、休業4日目以降から支給される給付
- 障害(補償)給付: 治療後も一定の障害が残った場合に、障害の程度に応じて支給される給付
労災保険は労働者本人の落ち度の有無にかかわらず給付の対象になり得るため、仕事中や通勤中のけがであれば、まずは勤務先や労働基準監督署に相談することが大切です。
社会保険の加入手続きはいつ・誰が行うのか
健康保険・厚生年金保険・雇用保険への加入手続きは、原則として勤務先(事業主)が行います。入社が決まった際に、マイナンバーや基礎年金番号などの提出を求められるのは、この手続きに必要な情報を会社が年金事務所やハローワークに届け出るためです。従業員本人が窓口へ出向いて手続きする必要は基本的にありませんが、必要書類の提出が遅れると保険証の発行などが遅れる場合があるため、入社時に案内された提出期限は守るようにしましょう。退職時も同様に、資格喪失の手続きは会社側で行われますが、健康保険証の返却など本人が対応すべき項目もあります。
傷病手当金:病気やけがで働けないときの健康保険の給付
業務外の病気やけがで働くことができず、給与が支払われない状態が続く場合、健康保険から「傷病手当金」が支給されることがあります。連続する3日間を含めて4日以上仕事を休んだ場合に、4日目以降の休業について、標準報酬日額のおおむね3分の2に相当する額が、通算1年6か月を限度に支給される仕組みです。労災保険の休業(補償)給付が業務中・通勤中のけがや病気を対象とするのに対し、傷病手当金は業務外の病気やけがを対象とする点が大きな違いです。制度の詳細や申請方法は、加入している協会けんぽや健康保険組合に確認するのが確実です。
よくある質問
社会保険と国民健康保険はどう違いますか
会社員が加入する健康保険・厚生年金保険は、勤務先を通じて加入し、保険料の一部を会社が負担する仕組みです。国民健康保険は自営業者やフリーランスなどが個人で加入する制度で、勤務先による保険料負担はありません。
パートやアルバイトでも社会保険に加入できますか
雇用形態にかかわらず、週の所定労働時間や所定労働日数が一定の条件を満たせば、健康保険・厚生年金保険・雇用保険の加入対象となります。
社会保険料は給与からどのくらい引かれますか
保険料率は制度や年度によって変わり、加入している保険者によっても異なります。具体的な金額は給与明細や勤務先の担当部署、加入先の保険者の公式サイトで確認することをおすすめします。
転職すると社会保険の手続きはどうなりますか
転職の際は、退職する会社での資格喪失手続きと、新しい勤務先での資格取得手続きが必要になるのが一般的です。手続きの多くは勤務先が行いますが、健康保険証の返却や年金の切り替えなど、本人が対応する項目もあるため、退職前に勤務先の担当部署へ確認しておくと安心です。







